戦争を子供達にどう教えるか

戦争・乱・変…日本の歴史を紐解くと、まさにそれは「戦争の歴史」と言っても過言ではありません
これは日本固有のことでもなく、世界中どの国でも、いや国と国が陸地で繋がりあう国ほどその傾向は強いものです。

■日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
■前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

ご存知の憲法第9条なのですが、これが1946年にできたときに「押し付けられた」ものなのか「自主的に日本国民が反省し制定した」ものなのかはさておき、とても高い理想に基づいているという事は言えそうです。

■日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、 われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、 名誉ある地位を占めたいと思ふ。

これもまたご存知のように憲法前文ですが、とても理想主義的なものであります。
特に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」というくだりは、理想度合いが高いのか非現実的なのかわからないくらいで、宗教的表現ともいえるものです。

これらは「想い」としては間違っていません。これを基本として戦争を考える事は正しい姿勢であると私は考えています。

憲法がどうあるべきか」…すなわち諸法を規定する最高法規である憲法の性格からはこの9条は現実に対応できるものではないのではありますが…

国どうし民族間相互、ある共同体相互の衝突を、戦闘行動を含む武力で解決するという事は望ましくない…という観点からスタートするとして、先ず何から教えるべきでしょうか…

そう

戦争の歴史です

世界の歴史は戦争の歴史である…と前述しましたが、「本当の戦争」(著クリス・ヘッジズ)と言う本にはこう書かれています。

- 世界が平和だったときはあるのですか? -
3400年にわたる人類の歴史で、人間の世界がまったく平和だったのは268年間、すなわち全体の8%にあたる。

日本ではいったいどうなるのでしょうか…
こういった視点での勉強は大変興味深いものです。

なぜその戦争は起こり誰が何を目的にしたか?戦争の結果「利益」はどのようなもので誰が得たか?

こういったことを考えていきながら日本国内・対外国の戦争(内戦・紛争も含め)歴史を見ていきますと、西南戦争までは国内のイニシアチブ争いであった事がよくわかります。(一部外国に対する「防衛戦争」「侵略戦争」がありますが)

島国の中での権力闘争としておこなわれたというのが明治時代までの主な戦争(内戦)です。

そういった事を鑑みるならば、なぜ子供達が(大人たちの多くも)いわゆる「戦国時代」に興味を持つのか不思議でしょうがありませんwww

もしかすると、無秩序の状態の中で戦闘能力が高ければ権力者になれるということの可能性に魅力を感じているのでしょうか…

この時期の戦闘能力が高い経済力(高い農業生産性や商業の発達等)によって支えられていた事を看過しているとしか思いようがありません。

次に日清戦争(1894年)日露戦争(1904年)第一次世界大戦への参戦(1914年)は一体当時の日本の動機は何だったのでしょうか…

私はそれを1920年に発足した国際連盟常任理事国に、イギリス・フランス・イタリアとともに日本が常任理事国に名を連ねた事が、この3つの大きな戦争の日本としての意味を表すものと考えています。

それは19世紀〜の帝国主義的領土拡大の世界の中で、自国が侵略される恐れの少ない(同時に自国が外国に侵攻して領土を拡大する可能性も含むのですが)先進国…帝国の仲間入りを果たしたという結果だからです。

明治期の「富国強兵政策」というものが、当時の先進国の日本への覇権・侵攻を食い止めるためのものであった事は、周知の事実です。いわば「防衛目 的」なのですが、同時の世界は「積極的防衛」でない限りいつなんどき自国が他国に支配されるか…といった状況であったのですからコレは仕方ありません。

1932年「満州事変」が起こりその後1937年に日中戦争が始まります。1940年太平洋戦争に参戦していくわけなのですが、ここでの日本の動機・目的はいったいなんだったのでしょうか?

「積極的防衛」「侵略」…

さあこれはどうも簡単にわかるようなことではなさそうです。
世界の1等国となった国ですから、その後の国家のあり様を考えた当時の人々の思いは一様ではなかったでしょう。

当時の日本は民主主義国家…少なくとも憲法と議会という民主主義的意思決定システムを持つ国…です。また天皇が主権者であったとしても、天皇個人の考えで政治的意思決定がなされたわけではありません。

たしかに1937年以降急速に政治が「軍国化」したという事は言えるのですが…

たいへん興味深い歴史の様々な事実がこの1932年以降の日本から見えてきます。決して「軍国主義全体主義化した侵略国家」や「戦争は全て防衛戦争であった」という決め付けでは正しくこの時期の戦争を見ることはできません。

さて。このような方法で戦争の歴史を見る事によって、「戦争とは何なのか」という問題の答えに1歩近づくことはできそうなのですが、それで答えが出るものではないという事を知らねばなりません。

生物学・社会学・心理学・経済学・もちろん政治学…いろいろな学問によって戦争の分析がなされています。コレラを学ぶ中で戦争のあらゆる側面や、それが起こる様々な原因の一つが解ると思います。

しかし、そうしたとしても「戦争がわかった」という事はおそらくないでしょう。ましてや「戦争を起こさないための方法」「平和のための方程式」…このようなものはおそらくない事かと思います。

私は、そうであることを知れば良いと思っています。
そしてどうしても戦争(内戦や紛争やテロも含み)起こしてしまうのが人間である…という事を知り、いかにそれを避けるか、もし起こった場合初期のうちに解決する方法を講じる…すなわち戦争を制御する必要がある…

このために私たちは学び、考え続けなければならないのだという事を子供達に教えるべきと思います。

ただの現実対応主義も、願うだけの原理的平和主義も役に立たないという事を教えるべきことだと思うのです。